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初めての中米・コスタリカ
*** サンホセからモンテベルデへ ***
 

 

「コスタリカの『リカ』って何ですか?」

ジャングルへの迎えのバスを待つ間、モンテベルデのホテルのフロントで尋ねてみた。毎回、会うたびに「おはよー♪」と日本語で挨拶してくる従業員だ。答えはRichという意味だそうだ。コロンブスがコスタリカを発見した当時、海岸の自然の豊富さに、『リッチな海岸』と名付けたことが国名の由来らしい。ついでにコスタリカの通貨単位、コロンはコロンブスにちなんでいるということも教えてくれた。

コスタリカの首都、サンホセ空港にヒューストン経由で到着したのは前日の夜だった。今回の旅行は、あらかじめ全てがスケジュールされたパッケージ旅行だ。パッケージといっても、一人旅なので団体に合わせる煩わしさを感じる必要はない。道中の送迎、宿泊、観光の全てが事前にアレンジされているので、自分で行き先を考えたり、予約をしたりする煩わしさもない。実に気楽な旅だが、短い休みの間に凝縮されたスケジュールをプライベートのために策定する余力は旅前の私にはひとかけらも残っていない。妥当な選択だった。
 
乗り換え待ちのときにゲート近くのオイスターバーで食べたカキ◆had some oysters at the bar in Houston airport
 
サンホセ空港近くに用意されたサンホセでの一夜目の宿◆The first hotel was near the airport
 
宿名はHotel Irazu◆It was Hotel Irazu
 
ホテル隣接デニーズでのコスタリカ朝食定番メニュー、ガジョピント◆had a traditional Costa Rican breakfast menu,Gallo Pinto
 


指定時間を15分ほど過ぎて、送迎車が到着した。サンホセからモンテベルデに向かう混乗車だ。7人乗りほどのワゴン車には既に欧米系男性2名とアジア人男性1名がばらばらに座っていた。座席の選択肢はただ一つ。3人席の奥、アジア人から一つ空けた隣の席を占めたとたんに、「日本人ですか」と尋ねられた。始まりから終わりまで、今回の旅行で唯一遭遇したアジア人であり日本人である。おかげさまで道中、母国語を話し続ける特典を得たうえに、調査不足の私にとってはとても貴重なコスタリカ情報を多くいただいた。

 
移動途中のレストラン、コスタリカにはハンモック風景がよく見られる
◆restaurant on the way to the destination. I could see many hammocks everywhere in the country
 
レストランの一角には土産物コーナー◆they sell Costa Rican souvenirs at the corner of restaurant
 
移動途中の土産物屋◆souvenir shop on the way to the destination


道中、まるっきり信号もなく、両車線ともそれ程混雑しているとは思えぬのどかな場所でワゴン車が急に減速した。工事中か何かと思ったら横転事故だった。
コスタリカに滞在中の7日間の間に、同様の横転事故は3度も見られた。居合わせたドライバーが、「コスタリカは道が狭いから、こういう事故は頻繁に起こるよ」と教えてくれた。
 
横転したトラック◆overturned truck


モンテベルデへの道は、途中、コンクリートの舗装道路からガタガタの未舗装道路へと続いていく。自然破壊を防ぐためだそうだが、車両走行の度に赤茶けた土埃が舞い上がるので、道路脇の家々はたまったものではないだろう。車内の旅人たちも、細かい揺れの中に時々大きな揺れが混ざるマッサージ機にまとめて放り込まれたような状態で運ばれてゆく。

右手に深い緑の塊が霞の白をまとい、鬱蒼と姿を表した。時折遠くに太平洋が見え隠れしながらの登山ドライブは、そろそろ終わりを告げそうだ。道の脇を、「ようこそサンタエレナへ」の看板が通り過ぎていく。サンタエレナはモンテベルデに隣接する小さな町だ。モンテベルデの熱帯雲霧林探索の拠点として、旅人たちに多くの宿を提供している。
 
モンテベルデのホテルの部屋、窓2つ分が1部屋◆hotel rooms at Monteverde
 
モンテベルデのホテルの部屋◆inside the room
 
タオルの折り紙◆origami towels


前夜のサンホセホテル到着から、私の中だけで秘かな事件があった。ヘアドライヤー事件である。まず髪洗い後、ヘアドライヤーが作動しなかったので調べたらプラグが抜けていた。コンセントの場所がいくら探しても見つからず、その夜は諦めた。翌朝、フロントで借りようかとも思ったが、やはり固定ドライヤーがあるのにプラグが届く場所にコンセントがないのは不自然過ぎるので、捜索を再開した。そしてようやく見つけた。上部ライトを支える細目の黒いカバー上でひっそりと擬態していた。

使用を開始したところ、再度問題が持ち上がった。通常、日本の小さなビジネスホテルなどにある固定ドライヤーは、カバーから外したとたんに、ぶおーっと弱い風が吹き始めるものだが、カバーから外しても何の反応もない。本体があった場所にONとOFFのボタンを見つけたのでONを押してみたら確かに作動を開始した。作動したはいいがボタンを放すと止まってしまう。ボタンを放すと止まってしまうなら、なぜOFFボタンが存在するのだろう。私は疑問に思いながらも、片手でONボタンを押さえながら、不自然な態勢で髪が半乾きになるまでがんばった。

モンテベルデのホテルのバスルームで全く同じ方式の固定ドライヤーを発見した私は思わず苦笑いをしてしまった。またこれだ。

その夜、早速試してみたが、結果は同じだった。不自然な態勢で苦労しながら、私はこのドライヤーをエコドライヤーと命名した。二酸化炭素量を減らすための具体案として、このエコドライヤーを全世界的に普及させることを提案してみたらどうだろう。日本では売れないだろうなぁ、こんな不便なもの。ドライヤーにこれだけ考えさせられたのは初めてだ。そこでふと思った。いくら何でもボタンを押したまま片手で使用するのは不便過ぎないだろうか。そもそもOFFボタンは何のためにあるのか。

電灯のスイッチを押すように、普通にボタンを押す要領でONボタンを押した後、手を放してみた。吹出口から乾いた音と熱風が放出されっぱなしになる。OFFボタンを押したら止まった。

・・・。
 
エコドライヤーの全体像、サンホセのホテルのもの
 
本体を外すと現れるON/OFFボタン、モンテベルデのホテルのもの


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